里芋の「芋煮」:地域別(山形、宮城)レシピと具材の違い

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里芋の「芋煮」:地域別(山形、宮城)レシピと具材の違い

里芋を主役にした煮込み料理「芋煮」は、東北地方で冬の風物詩として親しまれています。特に山形県と宮城県では、それぞれ独自のスタイルで芋煮が作られており、地域を代表する郷土料理として愛されています。

山形県:牛肉と醤油ベースの「芋煮」

山形県の芋煮は、一般的に「牛肉」を使い、「醤油」ベースの澄んだ汁で煮込むのが特徴です。これは、山形県が畜産業が盛んで、良質な牛肉が手に入りやすかったこと、そして醤油の生産も盛んであったことが背景にあると考えられます。

具材
  • 里芋(親芋、子芋)
  • 牛肉(肩ロースなどが一般的)
  • こんにゃく
  • ねぎ(太ねぎ)
  • きのこ類(しめじ、えのきなど)
  • 大根人参(彩りや甘みのために入れる家庭もある)
出汁
  • 昆布
  • 鰹節
味付け
  • 醤油
  • 砂糖(甘み)
  • みりん(照りとコク)
  • (家庭によっては、だし醤油を使用)

山形県芋煮の調理手順

  1. 里芋は皮をむき、大きめに切って下茹でし、ぬめりを取り除く。
  2. こんにゃくは下茹でしてアクを抜き、手でちぎるか、食べやすい大きさに切る。
  3. 牛肉は食べやすい大きさに切り、軽く下味をつけておく。
  4. 鍋に昆布と水を入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。
  5. 鰹節を加えて煮出し、ザルなどで濾して澄んだ出汁を作る。
  6. 鍋に出汁を戻し、里芋、こんにゃく、牛肉を入れて煮る。
  7. アクを丁寧に取りながら、具材に火が通るまで煮込む。
  8. 醤油、砂糖、みりんを加えて味を調える。
  9. 最後に、太めに切ったねぎを加えてさっと煮る。

山形県の芋煮は、牛肉の旨味と醤油の風味が調和した、深みのある味わいが特徴です。地域によっては、具材に豆腐や鶏肉を加える家庭もありますが、基本は牛肉と里芋、こんにゃく、ねぎとなります。また、汁の色は澄んでいるのが一般的で、これが「澄まし汁仕立て」とも呼ばれます。

宮城県:豚肉と味噌ベースの「芋煮」

一方、宮城県の芋煮は、「豚肉」を使い、「味噌」ベースで煮込むのが特徴です。これは、宮城県が沿岸部を中心に漁業も盛んで、内陸部では豚肉の流通が盛んであったことが影響していると考えられます。

具材
  • 里芋(親芋、子芋)
  • 豚肉(バラ肉やこま切れ肉など)
  • こんにゃく
  • ねぎ(太ねぎ)
  • きのこ類(しめじ、えのきなど)
  • 大根
  • 人参
  • (地域や家庭によっては、油揚げ豆腐を加えることも)
出汁
  • 昆布
  • 鰹節
  • (地域によっては、鶏ガラなどから出汁をとる場合も)
味付け
  • 味噌(米味噌、麦味噌など地域によって異なる)
  • 砂糖(甘み)
  • みりん
  • (家庭によっては、醤油を少量加えて味の調整をすることも)

宮城県芋煮の調理手順

  1. 里芋は皮をむき、大きめに切って下茹でし、ぬめりを取り除く。
  2. こんにゃくは下茹でしてアクを抜き、手でちぎるか、食べやすい大きさに切る。
  3. 豚肉は食べやすい大きさに切り、軽く下味をつけておく。
  4. 鍋に昆布と水を入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。
  5. 鰹節を加えて煮出し、ザルなどで濾して出汁を作る。
  6. 鍋に出汁を戻し、里芋、こんにゃく、豚肉を入れて煮る。
  7. アクを丁寧に取りながら、具材に火が通るまで煮込む。
  8. 味噌を溶き入れ、砂糖、みりんを加えて味を調える。
  9. 最後に、太めに切ったねぎを加えてさっと煮る。

宮城県の芋煮は、豚肉のコクと味噌の風味が合わさった、濃厚でまろやかな味わいが特徴です。味噌の種類によっても風味が異なり、地域ごとの特色が現れます。汁の色は、味噌の色で濁っており、これが「味噌仕立て」とも呼ばれます。

地域別(山形・宮城)の具材・調理の違いのまとめ

両県における芋煮の最大の違いは、主に使用される肉の種類と味付けのベースです。

地域 主な肉 味付けベース 特徴 山形県 牛肉 醤油 澄んだ汁、牛肉の旨味と醤油の風味 宮城県 豚肉 味噌 濁った汁、豚肉のコクと味噌の風味

しかし、これらの違いは絶対的なものではなく、家庭や地域によっては、山形県でも豚肉を使う場合があったり、宮城県でも醤油ベースで調理するといったバリエーションが存在します。また、近年では、より手軽に作れるように、市販の調味料やだしパックを利用する家庭も増えています。

里芋の役割と調理のポイント

どちらの芋煮においても、主役である「里芋」は欠かせない存在です。里芋は、加熱するととろりとした食感になり、煮汁をよく吸ってくれるため、料理全体の味をまろやかにする役割を果たします。

里芋の調理のポイント
  • ぬめり取り:皮をむいた里芋は、酢水や塩水で洗うか、軽く塩を振って揉むことでぬめりを取り除く。これにより、煮崩れしにくく、すっきりとした味わいになる。
  • 下茹で:大きめに切った里芋は、一度下茹でしてから煮込むことで、アクが抜け、味が染み込みやすくなる。
  • 煮崩れ防止:里芋は煮すぎると煮崩れてしまうため、他の具材がある程度火を通ってから加えるか、注意深く火加減を調整する。

芋煮が地域に根付く理由

芋煮は、単なる家庭料理にとどまらず、地域のお祭りや運動会、行楽シーズンなど、多くの人々が集まる場で振る舞われる、地域を繋ぐ大切な料理です。特に、山形県では「芋煮会」という言葉が一般的で、河原などで大人数が集まって芋煮を作るイベントが盛んに行われています。これは、芋煮が、家族や地域の人々との絆を深める象徴的な存在であることを示しています。

芋煮会
  • 家族や友人、地域住民などが集まり、屋外で大規模に芋煮を作るイベント。
  • 山形県では、秋になると各地の河原で芋煮会が開催されるのが風物詩となっている。
  • 近年では、企業や自治体による芋煮会イベントも企画されている。

宮城でも、家庭や地域で芋煮が作られ、親しまれています。両県で異なるスタイルの芋煮が発展してきた背景には、それぞれの地域の食文化や歴史、そして人々の暮らしが息づいていると言えるでしょう。

まとめ

里芋の「芋煮」は、山形県と宮城県でそれぞれ異なる特徴を持つ、東北地方を代表する郷土料理です。山形県では牛肉と醤油ベースの澄んだ汁、宮城県では豚肉と味噌ベースの濃厚な汁が特徴ですが、どちらも里芋の優しい甘みととろりとした食感が活かされた、心温まる煮込み料理です。具材や調理法に多少のバリエーションはありますが、地域の人々にとって、芋煮は単なる食事以上の意味を持ち、家族や友人との絆を深める大切な役割を担っています。この地域色豊かな芋煮は、これからも多くの人々に愛され、受け継がれていくことでしょう。