いも類の「低 FODMAP」:腸に優しいいも類の選び方

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腸に優しいいも類の選び方:低FODMAPに着目

消化器系の不調、特に過敏性腸症候群(IBS)に悩む人々にとって、日常の食事が大きな課題となることがあります。IBSの症状を悪化させる一因として、特定の種類の炭水化物であるFODMAP(Fermentable Oligosaccharides, Disaccharides, Monosaccharides, and Polyols)が挙げられます。FODMAPは小腸で吸収されにくく、大腸で腸内細菌によって発酵され、ガス発生や腹痛、下痢、便秘といった症状を引き起こす可能性があります。

いも類は、主食として、また副菜としても食卓に頻繁に登場する身近な食材ですが、その種類によってはFODMAPを多く含むものもあります。しかし、全てのいも類が悪いわけではありません。FODMAPの含有量が比較的少ない「低FODMAP」ないも類を選ぶことで、腸への負担を軽減し、美味しく栄養を摂ることができます。ここでは、腸に優しいいも類の選び方について、詳しく解説していきます。

FODMAPとは何か?

FODMAPとは、前述の通り、

  • オリゴ糖(オリゴフルクタン、ガラクトオリゴ糖など)
  • 二糖類(ラクトース:乳糖)
  • 単糖類(フルクトース:果糖)
  • ポリオール(ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール)

の頭文字を取ったものです。これらの炭水化物は、小腸での吸収が悪く、大腸で腸内細菌によって急速に発酵されます。その結果、腸管内に水分を引き込み、ガスを発生させ、腹痛、膨満感、下痢、便秘などのIBS症状を誘発することが知られています。

FODMAPの感受性は個人差が大きく、全ての人が同じように反応するわけではありません。しかし、IBSの症状緩和を目指す際には、一時的にFODMAPを多く含む食品を制限する「低FODMAP食」が有効な場合があります。

低FODMAPないも類の選び方

いも類の中でも、FODMAPの含有量に違いがあります。一般的に、以下のいも類は低FODMAP食品として推奨されています。

1. じゃがいも

じゃがいもは、低FODMAP食品の代表格です。主な炭水化物源はでんぷんですが、これはFODMAPに分類されません。調理法によっては、さらに低FODMAP化が期待できます。

  • 調理法:茹でる、蒸す、焼くといったシンプルな調理法がおすすめです。皮ごと調理することで、食物繊維も摂取できます。ただし、揚げ物のように油を多く使用する調理法は、消化に時間がかかり、人によっては胃腸に負担をかける可能性があります。
  • 注意点:じゃがいもは、冷めるとレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が増加します。これは腸内細菌のエサとなり、人によってはガスを発生させる可能性があります。温かい状態で食べるか、冷まして食べる場合は少量から試してみると良いでしょう。

2. さつまいも

さつまいもも、一般的に低FODMAP食品とされています。ただし、種類や調理法によっては注意が必要です。

  • 低FODMAPとされる目安量:一般的に、1/2カップ(約75g)程度であれば低FODMAPとされています。
  • 注意点:さつまいもに含まれる糖分(ショ糖)は、FODMAPには含まれませんが、過剰摂取は人によっては消化に影響を与える可能性があります。また、一部の品種や、大量に摂取した場合にFODMAP様の働きをする可能性も指摘されています。初めて食べる場合や、症状が気になる場合は、少量から試すようにしましょう。
  • 調理法:蒸したり、焼いたりするのがおすすめです。

3. 里芋

里芋も比較的低FODMAPないも類です。ねっとりとした食感が特徴で、独特の風味があります。

  • 低FODMAPとされる目安量:1/2カップ(約75g)程度であれば低FODMAPとされています。
  • 注意点:里芋に含まれる成分(シュウ酸カルシウム)が、人によっては口の中を刺激することがあります。これはFODMAPとは直接関係ありませんが、気になる方は少量から試すと良いでしょう。
  • 調理法:煮物やお味噌汁の具材としてよく利用されます。

避けた方が良い、または注意が必要ないも類

一方で、以下のいも類はFODMAPを多く含む、または注意が必要なため、IBS症状のある方は摂取量に気をつけるか、避けた方が良い場合があります。

1. 山芋・長芋・やまと芋

山芋、長芋、やまと芋などの山芋類は、消化酵素(アミラーゼ)を多く含んでいますが、これらはFODMAPではありません。しかし、これらの山芋類は、フルクタン(オリゴ糖の一種)を比較的多く含んでいます。

  • 注意点:フルクタンは、一部の人にとってIBS症状を引き起こす可能性があります。そのため、山芋類は高FODMAP食品として扱われることがあります。摂取量には十分注意し、症状が出る場合は避けるのが賢明です。

2. こんにゃく

こんにゃくは、主成分がグルコマンナンという食物繊維であり、FODMAPではありません。しかし、こんにゃく芋自体には、グルコマンナンという水溶性食物繊維が多く含まれており、これが腸内で発酵し、ガスを発生させる可能性があります。

  • 注意点:こんにゃくは、一般的に「低FODMAP」とされることもありますが、体質によってはガスを発生させやすい食品です。初めて食べる場合や、お腹の調子が気になる場合は、少量から試すのが良いでしょう。

3. その他

  • むかご:むかごは、山芋の仲間であり、フルクタンを多く含むため、高FODMAP食品と考えられます。
  • 芋類を加工した食品:ポテトチップスやフライドポテトなど、油で揚げたものや、添加物が含まれる加工品は、消化に負担をかけるだけでなく、FODMAP含有量も高くなる可能性があります。

低FODMAP食におけるいも類の活用法

低FODMAP食は、一時的にFODMAPを制限し、症状が改善したら徐々に食品を再導入していくアプローチです。この期間中、いも類は貴重なエネルギー源となります。

  • 主食として:白米やパンの代わりに、茹でたじゃがいもや蒸しさつまいもを主食として取り入れることができます。
  • 副菜として:じゃがいもと鶏肉の煮物、さつまいもの甘煮(少量)、里芋の味噌汁など、消化の良い調理法で、他の低FODMAP食材と組み合わせて調理しましょう。
  • 食事のバランス:いも類だけでなく、肉、魚、卵、低FODMAPの野菜(にんじん、きゅうり、ほうれん草など)や果物(バナナ(熟していないもの)、オレンジなど)もバランス良く摂取することが大切です。

注意点とまとめ

低FODMAP食は、IBS症状の改善に有効な場合がありますが、自己判断で行うのではなく、医師や管理栄養士の指導のもとで行うことが推奨されます。FODMAPの感受性は個人差が大きく、ある食品が大丈夫な人もいれば、そうでない人もいます。

今回ご紹介したいも類のFODMAP含有量に関する情報は、一般的な目安です。ご自身の体調と相談しながら、摂取する量や種類を調整してください。

低FODMAPないも類を上手に取り入れることで、腸への負担を抑えつつ、美味しく食事を楽しむことができます。じゃがいも、さつまいも(少量)、里芋は、比較的安全に摂取できるいも類です。一方で、山芋類や、加工品には注意が必要です。ご自身の体質を理解し、専門家のアドバイスを受けながら、食生活を工夫していくことが、健康維持に繋がります。

まとめ

腸に優しいいも類の選び方においては、FODMAPの含有量が重要なポイントとなります。じゃがいもは最も安心して摂取できる低FODMAPないも類であり、調理法も多様です。さつまいもや里芋も、適量であれば低FODMAP食品として活用できます。しかし、山芋類や、油を多く使った加工品などは、FODMAP含有量が高い、または消化に負担をかける可能性があるため、摂取量に注意が必要です。

低FODMAP食は、一時的な食事療法であり、症状の改善が見られたら、徐々に食品を再導入していくことが重要です。いも類は、低FODMAP食期間中の貴重なエネルギー源となりますので、低FODMAPないも類を上手に活用し、バランスの取れた食事を心がけましょう。ご自身の体調の変化に注意を払い、必要であれば専門家(医師や管理栄養士)の指導を受けることをお勧めします。