いも類の「加工品」:ポテトチップス、粉末、フレークの製造工程

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いも類加工品:ポテトチップス、粉末、フレークの製造工程

ポテトチップス製造工程

1. 原料の選定と受け入れ

ポテトチップスの製造において、最も重要なのが原料となるじゃがいもです。チップス製造に適した品種(フライドポテト用品種など)が選ばれます。これらのじゃがいもは、畑から収穫後、品質検査を経て工場へと運ばれます。傷や病気がないか、デンプン含量は十分かなどを確認し、良質なものだけが選ばれます。選定基準を満たさないものは、加工用や飼料用として別途利用されることもあります。

2. 洗浄

受け入れられたじゃがいもは、まず徹底的に洗浄されます。泥や土、異物などを取り除くために、回転式の洗浄機やブラシ洗浄機などが使用されます。この工程で、じゃがいもの表面を清潔に保つことが、製品の品質に大きく影響します。

3. 皮むき

洗浄後、じゃがいもの皮をむきます。皮むきには、機械的な方法が用いられます。例えば、回転するドラムの内側に研磨材をつけ、じゃがいも同士がこすれ合うことで皮をむく方法や、蒸気や熱風で皮を一時的に加熱し、その後の冷却で皮を剥がしやすくする方法などがあります。これにより、じゃがいもの形状を保ちつつ、効率的に皮を取り除きます。

4. スライス

皮をむいたじゃがいもは、厚さ1mm~2mm程度に薄くスライスされます。スライサーには、高速回転する円盤状の刃が多数ついたものが使用され、均一な厚さにスライスされることが重要です。厚さが均一でないと、揚げムラが生じ、食感や風味にばらつきが出てしまいます。スライスされたじゃがいもは、デンプンが水に溶け出すのを防ぐため、すぐに洗浄されます。

5. 洗浄(デンプン除去)

スライスされたじゃがいもの表面には、デンプンが付着しています。このデンプンを洗い流すことで、揚げた際にじゃがいも同士がくっつきにくくなり、カリッとした食感を生み出すことができます。冷水で数回洗浄する工程は、ポテトチップスの食感と品質を左右する重要なプロセスです。洗浄後、余分な水分を取り除くために脱水されます。

6. 揚げる(フライ工程)

脱水されたじゃがいもは、高温の食用油(植物油など)で揚げられます。このフライ工程は、ポテトチップスの特徴であるカリッとした食感と香ばしさを生み出す最も重要な工程です。油の温度は150℃~180℃程度に保たれ、じゃがいもの厚さや種類によって揚げ時間は調整されます。油の種類や温度、時間管理が、ポテトチップスの色や風味、食感に大きく影響します。最近では、油で揚げる代わりに、熱風で加熱する「ノンフライ」タイプのポテトチップスも増えています。

7. 脱油

揚げ終わったポテトチップスは、余分な油を切るために脱油されます。遠心分離機や振動ふるいなどが使用され、油分を効率的に除去することで、べたつきがなく、軽い食感のポテトチップスに仕上げられます。

8. 調味

脱油されたポテトチップスは、様々なフレーバーを付与するために調味されます。塩味、コンソメ味、のり塩味など、多様な調味料が均一にスプレーなどで吹き付けられます。調味料の量や均一性が、製品の味の決め手となります。調味後、再度軽く加熱して調味料を馴染ませることもあります。

9. 冷却と選別

調味されたポテトチップスは、冷却されます。その後、割れや焦げ付き、異物などを除去するために、金属探知機や目視による選別が行われます。品質基準を満たさないものは取り除かれます。

10. 包装

選別されたポテトチップスは、鮮度を保つために、アルミ蒸着フィルムなどの包装材で密封されます。窒素ガスを充填することで、酸化を防ぎ、品質を長持ちさせます。包装形態も、袋詰め、箱詰めなど様々です。

ポテト粉末製造工程

ポテト粉末は、じゃがいもを乾燥・粉砕して作られる加工品で、様々な料理の材料として利用されます。近年では、グルテンフリーの食品としても注目されています。

1. 原料の選定と洗浄

ポテトチップスと同様に、品質の良いじゃがいもが選ばれます。洗浄後、形状を整えるために皮をむき、必要であれば芽や傷なども取り除かれます。

2. 加熱処理

じゃがいもを加熱し、柔らかくします。蒸す、茹でる、焼くといった方法があります。この工程で、じゃがいもの組織を分解し、乾燥しやすくします。デンプンを糊化させることで、水との親和性を高め、粉末にした際の溶解性や増粘性を向上させます。

3. 乾燥

加熱されたじゃがいもは、水分を飛ばすために乾燥させます。乾燥方法にはいくつか種類があります。

  • スプレードライ法: 加熱処理したじゃがいもをペースト状にし、熱風中に噴霧して瞬時に乾燥させる方法です。微細で均一な粉末が得られ、溶解性が高いのが特徴です。
  • ドラムドライ法: 加熱処理したじゃがいもをペースト状にし、回転する熱したドラムの表面に薄く塗り広げて乾燥させる方法です。比較的安価ですが、乾燥ムラが生じやすい場合があります。
  • オーブンドライ法: 加熱処理したじゃがいもをシート状にし、オーブンで乾燥させる方法です。

乾燥温度や時間は、粉末の品質(色、風味、溶解性など)に大きく影響します。高温すぎると焦げ付きや風味の劣化を招く可能性があります。

4. 粉砕

乾燥されたじゃがいもは、粉砕機によって細かく粉砕されます。ハンマーミルやボールミルなどの装置が使用され、均一な粒子径の粉末にします。粒子径の細かさは、製品の用途によって調整されます。

5. 篩過(ふるいわけ)

粉砕された粉末は、必要に応じて篩(ふるい)を通して、粒子径の均一性を高めます。これにより、ダマになりにくく、使いやすい粉末製品となります。

6. 包装

完成したポテト粉末は、湿気を防ぐために密閉性の高い袋などに包装されます。保存性を高めるために、脱酸素剤や乾燥剤が同梱されることもあります。

ポテトフレーク製造工程

ポテトフレークは、ポテト粉末よりもやや粗い粒度の乾燥じゃがいも製品で、マッシュポテトの素などに利用されます。製造工程はポテト粉末と類似していますが、乾燥方法や粉砕の度合いに違いがあります。

1. 原料の選定・洗浄・皮むき

ポテト粉末と同様に、品質の良いじゃがいもを選定し、洗浄、皮むきを行います。

2. 加熱・蒸煮

じゃがいもを蒸したり茹でたりして、柔らかくします。デンプンを糊化させ、細胞壁を破壊することが目的です。この工程は、乾燥効率を上げるために重要です。

3. 圧搾・混合

加熱・蒸煮されたじゃがいもを圧搾機などで潰し、ペースト状にします。この際、少量の水や調味料、場合によっては油脂などを加えて、均一なペースト状にすることがあります。これにより、均一な乾燥を促進し、風味を向上させます。

4. 乾燥

ポテトフレークの製造における乾燥は、ポテト粉末よりもやや低めの温度で、時間をかけて行うのが一般的です。これにより、フレーク状の組織を保ちながら水分を飛ばします。代表的な乾燥方法としては、

  • ベルトコンベア乾燥: 圧搾されたじゃがいもをベルトコンベアに乗せ、熱風を当てながら乾燥させる方法です。
  • ドラム乾燥: ドラムドライ法と同様に、回転するドラムに塗布して乾燥させますが、フレーク状になるように調整します。

乾燥温度と時間は、フレークの水分含量や食感に大きく影響します。

5. 冷却・粉砕・篩過

乾燥されたじゃがいもは、冷却されます。その後、ポテト粉末よりも粗めに粉砕され、篩を通して粒子径を調整します。ポテトフレークは、マッシュポテトにした際に、滑らかな舌触りになるように、一定の粒子径が求められます。

6. 包装

完成したポテトフレークは、湿気を防ぐために包装されます。ポテト粉末と同様に、保存性を高めるための工夫が施されます。

まとめ

ポテトチップス、ポテト粉末、ポテトフレークは、それぞれ異なる製造工程を経て、多様な食感や用途を持つ加工品へと生まれ変わります。ポテトチップスは、スライス、フライ、調味という工程を経て、あの独特のカリカリとした食感と風味を生み出します。一方、ポテト粉末とポテトフレークは、じゃがいもを乾燥・粉砕する工程が中心となりますが、乾燥方法や粉砕の度合いによって、最終的な製品の性質が異なります。これらの加工技術により、じゃがいもは一年を通して安定して利用できる、私たちの食生活に欠かせない食材となっています。