いも類の「茹で方」:栄養素を逃さず美味しく茹でる方法
いも類は、私たちの食卓に欠かせない栄養満点な食材です。主食にも副菜にもなり、調理法も豊富ですが、その中でも「茹でる」というシンプルな調理法は、いも本来の美味しさや栄養を最大限に引き出すための重要なカギとなります。しかし、ただお湯に入れるだけでは、せっかくの栄養素が流れ出てしまったり、食感が悪くなってしまったりすることも少なくありません。ここでは、いも類を美味しく、そして栄養素を逃さずに茹でるための具体的な方法を、種類別、さらに調理のポイントや注意点まで、詳しく解説していきます。
いも類を美味しく・栄養素を逃さず茹でるための基本原則
いも類に含まれる主な栄養素は、でんぷん、ビタミンC、カリウムなどです。これらの栄養素をできるだけ無駄なく摂取するためには、いくつかの基本原則があります。
① 水から茹でるか、お湯から茹でるか
いも類を茹でる際には、水から茹でるのが基本です。これは、いも類のでんぷんがゆっくりと加熱されることで、内部まで均一に火が通りやすくなり、ホクホクとした食感を生み出すためです。また、水から茹でることで、いも類に含まれる水溶性のビタミンCやカリウムが、お湯に溶け出すのを緩やかにすることができます。急激な温度変化は、栄養素の流出を招きやすいため、穏やかな加熱が望ましいのです。
② 茹でる時間
茹で時間は、いもの種類や大きさによって大きく異なります。硬いものほど長く、柔らかいものほど短く茹でます。竹串やフォークなどを刺してみて、スッと通るくらいが目安ですが、料理によって求められる食感が異なるため、臨機応変に調整することが大切です。
③ 塩の役割
茹でる際に少量の塩を加えると、いも類の甘みを引き出し、味に深みを与える効果があります。また、塩水で茹でることで、いもが崩れにくくなるという利点もあります。ただし、入れすぎると塩辛くなるので注意が必要です。
④ 茹で汁の活用
いも類を茹でた後の茹で汁には、栄養素が溶け出しています。捨ててしまうのはもったいないので、ポタージュスープや味噌汁、煮込み料理の出汁として活用すると、栄養を無駄なく摂ることができます。
種類別・いも類の美味しい茹で方
いも類と一口に言っても、その種類によって適した茹で方や食感が異なります。ここでは、代表的ないも類について、それぞれ美味しく茹でる方法を紹介します。
じゃがいも
じゃがいもは、ホクホクとした食感が特徴で、煮崩れしやすい品種とそうでない品種があります。一般的には、皮ごと水から茹でるのがおすすめです。皮ごと茹でることで、ビタミンCやカリウムの流出を抑えられます。芽の部分は毒性があるため、必ず取り除いてください。大きさを揃えて切ることで、均一に火が通りやすくなります。皮を剥いてから茹でる場合は、冷たい水から茹で始め、沸騰したら弱火にし、竹串がスッと通るまで茹でます。煮崩れさせたくない場合は、やや硬めに茹でるのがコツです。
さつまいも
さつまいもは、甘みとホクホクとした食感が魅力です。水から茹でるのが基本ですが、甘みを最大限に引き出すには、弱火でじっくりと時間をかけて茹でるのがポイントです。低温でゆっくり加熱することで、でんぷんが糖に分解され、甘みが増します。皮ごと茹でることで、風味が保たれ、栄養素の流出も抑えられます。皮が気になる場合は、剥いてから茹でても良いでしょう。竹串がスッと通ったら茹で上がりです。茹ですぎると食感が悪くなるので注意が必要です。
里芋
里芋は、ぬめりが特徴で、独特の食感があります。皮ごと、または親芋から子芋を切り離した状態で、水から茹でるのが一般的です。皮ごと茹でることで、ぬめりや風味が逃げにくくなります。茹でている間にアクが出てくることがあるので、気になる場合はアクをすくい取ります。竹串がスッと通るまで茹でたら、流水で冷やし、皮をむきます。皮をむいた後に茹でる場合は、変色しやすいので、切ったらすぐに水にさらすか、塩少々を入れたお湯で茹でます。
山芋(長芋・山芋)
山芋は、生で食べられることも多いですが、加熱することでホクホクとした食感になります。皮をむいてから、大きめに切って、沸騰したお湯(または水から)で短時間で茹でるのがおすすめです。加熱しすぎると、食感が失われ、粘り気も弱くなってしまうため、注意が必要です。竹串がスッと通る程度で火からおろします。加熱しすぎは風味を損なう原因にもなります。
調理のポイントと注意点
いも類を美味しく茹でるためには、いくつかの調理のポイントと注意点があります。これらを理解することで、さらに調理の幅が広がります。
① 大きさを揃える
いも類を茹でる前に、大きさを均一に揃えることが非常に重要です。大きさがバラバラだと、火の通りにムラが出てしまい、一部は硬く、一部は煮崩れてしまう原因となります。切る際には、できるだけ同じくらいの大きさに揃えましょう。
② アクの処理
じゃがいもや里芋などは、アクが出やすい食材です。アクは、えぐみや苦味の原因となることがあるため、気になる場合は、茹でる前に水にさらしたり、茹でている間にアクを丁寧に取り除いたりすることが大切です。特に、じゃがいもは切ってから水にさらすと、でんぷん質が流れ出てしまい、煮崩れしやすくなることがあるので、注意が必要です。
③ 茹で過ぎに注意
いも類は、茹で過ぎると煮崩れてしまい、食感が悪くなるだけでなく、栄養素も流れ出しやすくなります。竹串やフォークで火の通りを確認しながら、最適なタイミングで火からおろすことが重要です。料理によっては、少し硬めに茹でて、後で煮込み料理などに使うと、形が崩れにくくなります。
④ 冷まし方
茹で上がったいも類を、急激に冷やすと、内部の水分が抜けやすくなり、パサついた食感になることがあります。自然に冷ますか、温かいまま使うのが、しっとりとした食感を保つコツです。ただし、サラダなどで冷たい状態で使いたい場合は、湯切りをしてから、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やすと良いでしょう。
⑤ 圧力鍋の活用
時間がない時や、ホクホクとした食感をより強調したい場合は、圧力鍋の活用も有効です。圧力鍋を使うと、短時間で火が通り、でんぷんがしっかり分解されるため、甘みが増し、ホクホクとした仕上がりになります。ただし、茹ですぎにはより一層注意が必要です。
⑥ 皮付きで茹でるメリット
先述の通り、皮付きで茹でることで、栄養素の流出を最小限に抑え、風味を保つことができます。特に、ビタミンCやカリウムは水溶性であるため、皮が保護膜の役割を果たします。茹で上がった後に皮をむけば、手軽に栄養価の高い調理が可能です。
⑦ 茹で湯の活用方法
いも類を茹でた後の茹で湯には、でんぷんやビタミン、ミネラルが溶け出しています。この茹で湯は、非常に栄養価が高いので、捨てずに活用しましょう。例えば、
- スープのベースとして: ポタージュスープや味噌汁の出汁として使うと、コクと旨味が増します。
- 煮込み料理の隠し味に: カレーやシチューなどの煮込み料理に少量加えると、とろみが増し、まろやかな味わいになります。
- お米を炊く際に: 少量を加えて炊くと、ふっくらとしたご飯に仕上がります。
まとめ
いも類を美味しく、そして栄養素を逃さずに茹でるためには、
- 基本は水から茹でる
- 茹で時間を種類や大きさに合わせる
- 少量の塩を加える
- 茹で汁を有効活用する
ことが重要です。さらに、じゃがいも、さつまいも、里芋、山芋といった種類ごとの特徴を理解し、それに合わせた茹で方を選択することで、それぞれのいも本来の美味しさを最大限に引き出すことができます。調理の際には、大きさを揃える、アクを処理する、茹で過ぎに注意する、適切な冷まし方をするといったポイントを意識することで、さらに仕上がりが良くなります。これらの知識と工夫を活かして、日々の食卓に栄養豊富で美味しいいも料理を取り入れてみてください。
