じゃがいもの「炒め物」:ホクホク、シャキシャキを両立する調理法

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じゃがいもの「炒め物」:ホクホク、シャキシャキを両立する調理法

じゃがいもは、その多様な食感から様々な調理法で楽しまれますが、「炒め物」においては、ホクホクとした食感とシャキシャキとした食感を同時に楽しむことができれば、まさに至福の味わいと言えるでしょう。この二つの対照的な食感を両立させるためには、いくつかの重要なポイントと、それを踏まえた丁寧な調理プロセスが不可欠です。ここでは、その秘密を紐解き、誰でも美味しいじゃがいもの炒め物を作れるように、詳しく解説していきます。

ホクホク食感の秘密

じゃがいもがホクホクになるのは、でんぷんが糊化し、内部の水分が適度に蒸発することで生まれる、あの軽やかで粉っぽいような食感です。この食感を得るためには、じゃがいも内部のでんぷんをしっかり火を通しつつ、外部の水分を適度に逃がす必要があります。

じゃがいもの下準備:切り方と下茹で

ホクホク食感を最大限に引き出すためには、じゃがいもの切り方が重要です。一般的に、炒め物で使うじゃがいもは、乱切りや一口大に切ることが多いですが、ホクホク感を重視するなら、少し厚めに切るのがおすすめです。厚めに切ることで、外側が炒められて香ばしくなる間に、中心部までじっくりと火が通りやすくなります。

さらに、炒める前に下茹でをすることは、ホクホク食感への近道です。ただし、ここで注意したいのは、茹ですぎは禁物ということです。じゃがいもが崩れてしまうほど茹でてしまうと、炒めている間にベチャベチャになってしまい、ホクホク感は失われてしまいます。

下茹では、竹串がスッと通る程度、つまり半生の状態を目指します。茹で時間はじゃがいもの大きさにもよりますが、概ね5〜7分程度が目安です。茹で上がったら、ザルにあげてしっかりと水気を切ることが重要です。水気が残っていると、炒める際に油の温度が下がってしまい、カラッと仕上がりにくくなります。

炒め方:高温で短時間

ホクホク食感を残したまま炒めるためには、強火で短時間で仕上げるのがコツです。フライパンに多めの油を熱し、煙が出る直前の高温になったら、下茹でして水気を切ったじゃがいもを投入します。

じゃがいもをフライパンに入れたら、あまり触りすぎないことが大切です。触りすぎると、じゃがいもの表面が傷つき、崩れやすくなってしまいます。まずは2〜3分ほど、触らずに片面をじっくり焼くイメージです。こうすることで、じゃがいもの表面に香ばしい焼き色がつき、ホクホクとした食感の基盤が作られます。

その後、全体を大きく混ぜながら、均一に焼き色がつくように炒めていきます。この時、火加減は強火をキープし、じゃがいもがフライパンに張り付かないように、時折フライパンを煽るようにすると、よりカラッと仕上がります。

シャキシャキ食感の秘密

一方、じゃがいものシャキシャキとした食感は、じゃがいもに含まれる水分が適度に残っていること、そして加熱しすぎないことで生まれます。この食感は、炒め物にアクセントを加え、単調な味わいを豊かにしてくれます。

じゃがいもの下準備:切り方と水にさらす

シャキシャキ食感を得るためには、薄めに切ることが効果的です。千切りや薄切りにすることで、火の通りが均一になりやすく、加熱しすぎを防ぐことができます。

また、切ったじゃがいもを水にさらすことは、シャキシャキ食感を保つ上で非常に重要です。水にさらすことで、じゃがいも表面のでんぷん質が洗い流され、炒め物同士がくっつきにくくなり、ベチャつきを防ぐことができます。さらに、水にさらすことでじゃがいものアクも取れ、色鮮やかに仕上がります。

水にさらす時間は、10分〜15分程度が目安です。時間がない場合は、流水でさっと洗うだけでも効果があります。水にさらした後は、必ずキッチンペーパーなどでしっかりと水気を拭き取ることが、シャキシャキ食感を保つための鍵となります。

炒め方:火加減の調整とタイミング

シャキシャキ食感を残したい場合は、加熱時間と火加減が重要になります。強火で手早く炒めることで、じゃがいもの水分を飛ばしすぎず、食感を残すことができます。

ホクホク食感を狙う場合とは異なり、シャキシャキ食感を狙う場合は、じゃがいもをフライパンに入れたら、あまり長時間炒めすぎないように注意が必要です。数分炒めたら、他の具材と合わせたり、調味料を加えたりするタイミングを見計らいます。

ホクホクとシャキシャキを両立させる調理法

この二つの食感を同時に楽しむためには、じゃがいもの下処理と炒める順番が鍵となります。

じゃがいもの種類と切り方

ホクホクになりやすい男爵薯やデンプン質の多い品種と、煮崩れしにくい、煮汁を吸いにくいメークインやキタアカリなど、品種によっても食感は変わってきます。基本的には、ホクホクさせたい部分は厚めに、シャキシャキさせたい部分は薄めに切る、あるいは異なる切り方で切ったじゃがいもを別々に調理するという方法もあります。

しかし、一般的に一つの炒め物で両立させるには、ある程度の厚みを持たせたじゃがいもを使い、火の通り加減をコントロールすることが重要です。

炒める順番と火加減のコントロール

ホクホクとシャキシャキを両立させるための最も効果的な方法は、じゃがいもを炒める順番を工夫することです。

1. 下茹でした厚めのじゃがいもを強火で焼き色がつくまでじっくり炒めます。ホクホク食感のベースを作ります。
2. ここで、薄切りまたは千切りにしたじゃがいもを加え、強火で手早く炒めます。シャキシャキ食感を残します。
3. 他の具材(玉ねぎ、ピーマン、豚肉など)を加えるタイミングも重要です。火の通りにくいものから順に加え、全体が均一に炒まるようにします。
4. 味付けは、最後の方に行います。醤油、みりん、酒、塩、胡椒などをお好みで。調味料を加えたら、全体に絡めるようにさっと炒め、火を止めます。

この方法で調理することで、厚めに切ったじゃがいもは中心まで火が通り、ホクホクとした食感になります。一方、後から加えた薄切りのじゃがいもは、加熱時間が短く、シャキシャキとした食感を保ちます。

油の役割

炒め物において油は、熱を均一に伝える、具材同士がくっつくのを防ぐ、風味を豊かにするといった重要な役割を果たします。ホクホク食感を出すためには、ある程度の油を使い、高温でカラッと仕上げることが大切です。

シャキシャキ食感を出す場合も、油は不可欠ですが、炒めすぎや油の量によってはベチャつく原因にもなり得るので、適量を見極めることが重要です。

美味しく作るためのその他のコツ

* 具材の組み合わせ:じゃがいもとの相性が良い豚肉、ベーコン、玉ねぎ、ピーマン、きのこ類などを加えると、彩りも風味も豊かになります。
* 調味料:醤油、みりん、酒は定番ですが、オイスターソースやケチャップ、バターなどを加えることで、アレンジの幅も広がります。
* 仕上げ:ごま油を少量たらしたり、刻みネギや七味唐辛子を散らしたりすると、香りが引き立ち、食欲をそそります。

まとめ

じゃがいもの「炒め物」でホクホクとシャキシャキの食感を両立させるには、じゃがいもの下準備(切り方、下茹で、水にさらす)と、炒める順番、火加減のコントロールが最も重要です。厚めに切ったじゃがいもを下茹でしてじっくり焼き色をつけ、後から薄切りのじゃがいもを加えて手早く炒めることで、それぞれの食感を最大限に引き出すことができます。油の量や調味料を加えるタイミングにも注意しながら、高温で手際よく調理することで、食感のコントラストが楽しめる美味しいじゃがいもの炒め物が完成します。これらのポイントを押さえれば、食卓が一層豊かになること間違いなしです。