じゃがいもの「切り方」:料理によって最適なカット術

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じゃがいもの「切り方」:料理によって最適なカット術

じゃがいもは、その多様な食感と汎用性から、世界中で愛されている根菜です。しかし、ただ切るだけでは、そのポテンシャルを最大限に引き出すことはできません。料理の種類によって最適な「切り方」が存在し、そのカット術をマスターすることで、じゃがいもの美味しさを格段に向上させることができます。

じゃがいもの切り方は、大きく分けて「火の通りやすさ」「食感」「味の染み込みやすさ」に影響を与えます。これらの要素を理解し、目指す料理の完成形に合わせて適切なカットを選ぶことが重要です。

一般的なじゃがいもの切り方と特徴

まずは、よく使われる基本的な切り方とその特徴を見ていきましょう。

・乱切り

乱切りは、じゃがいもを不揃いの大きさに切る方法です。一般的に、一口大よりもやや大きめに、角を落とすように切ります。この切り方の利点は、煮崩れしにくく、ホクホクとした食感が残りやすいことです。

煮込み料理やポトフ、カレーなど、じっくりと火を通して具材の旨味を引き出したい料理に適しています。不揃いな形が、見た目のアクセントにもなります。

・角切り(さいの目切り)

角切りは、じゃがいもをサイコロ状に切る方法です。大きさは、一般的に1.5cm~2cm角程度が目安ですが、料理によって調整します。

この切り方は、火の通りが均一で、比較的短時間で調理できます。炒め物、ジャーマンポテト、サラダ、スープなど、様々な料理に使いやすい万能な切り方と言えるでしょう。

ただし、小さすぎると煮崩れしやすくなるため、注意が必要です。

・いちょう切り

いちょう切りは、じゃがいもを縦半分に切り、さらにそれを数ミリ~1cm程度の厚さに切る方法です。名前の通り、銀杏の葉のような形になります。

この切り方は、火の通りが非常に早く、電子レンジでの加熱や炒め物、揚げ物(フライドポテトなど)に適しています。薄めに切ることで、パリッとした食感やカリッとした食感を出すことも可能です。

味噌汁の具材としてもよく使われ、ホクホクとした食感と甘みを楽しめます。

・短冊切り

短冊切りは、じゃがいもを薄くスライスし、それを数ミリ~1cm幅の棒状に切る方法です。きんぴらごぼうのようなイメージです。

この切り方は、火の通りが早く、味が染み込みやすいのが特徴です。きんぴらや炒め物、きんぴら風の煮物などに適しています。シャキシャキとした食感を残したい場合にも有効です。

・千切り

千切りは、じゃがいもを非常に細い糸状に切る方法です。細ければ細いほど、火の通りが速くなります。

細かく切ることで、シャキシャキとした食感を活かすことができます。ポテトサラダの隠し味として細かく刻んで加えたり、細い千切りにしてかき揚げにしたりするのに適しています。ただし、包丁で千切りにするのは難易度が高いため、スライサーを使うのが一般的です。

・輪切り

輪切りは、じゃがいもを円盤状に切る方法です。厚さはお好みで調整します。

この切り方は、見た目が美しく、グラタンやドリアの具材として、あるいはカレーの具材として、じゃがいもの存在感を際立たせたい場合に適しています。また、厚めに切って揚げれば、ポテトチップスのような食感を楽しむこともできます。

・スライス

スライスは、じゃがいもを薄い円盤状に切る方法です。輪切りよりも薄く切る場合を指すことが多いです。

薄くスライスすることで、火の通りが非常に早く、電子レンジでの加熱や、薄焼きポテト、ポテトチップスなどの調理に最適です。また、薄く切って揚げることで、カリカリとした食感を生み出すことができます。

料理別!最適なじゃがいもの切り方ガイド

ここからは、具体的な料理ごとに最適なじゃがいもの切り方をご紹介します。

煮込み料理(カレー、シチュー、ポトフなど)

煮込み料理では、じゃがいもが煮崩れせずに、ホクホクとした食感を保つことが重要です。また、具材として存在感があり、スープの旨味を吸い込むことも期待されます。

・乱切り

最もおすすめなのが乱切りです。大きめに切ることで、煮込んでも形が崩れにくく、ホクホクとした食感が楽しめます。不揃いの形も、素朴な煮込み料理の雰囲気に合います。

・角切り(大きめ)

角切りでも、大きめに切れば煮崩れを防ぐことができます。ただし、あまり小さすぎると煮崩れてしまうので注意しましょう。

炒め物(ジャーマンポテト、きんぴら風など)

炒め物では、火の通りが早く、しっかりと炒められる切り方が適しています。

・角切り

一般的に角切りが使いやすいです。火の通りが均一で、炒めることで表面が香ばしくなり、中がホクホクとした食感になります。ジャーマンポテトに最適です。

・いちょう切り

火の通りを重視するならいちょう切りも良いでしょう。薄めに切ることで、カリッと香ばしく炒めることができます。

・短冊切り

きんぴら風に炒める場合は、短冊切りが食感も良く、味も染み込みやすいのでおすすめです。

サラダ(ポテトサラダ、マッシュポテトなど)

サラダでは、じゃがいもの食感や、他の具材とのバランスが重要になります。

・角切り

ポテトサラダでは、角切りにして、一度茹でるか蒸してから潰すのが一般的です。潰し加減で食感が変わります。ゴロゴロとした食感を楽しみたい場合は、少し大きめの角切りにするのがおすすめです。

・いちょう切り

マッシュポテトを作る際には、いちょう切りにして、柔らかくなるまで茹でてから潰すと、滑らかなマッシュポテトが作りやすいです。

・千切り

ポテトサラダに、千切りにしたじゃがいもを少量加えると、シャキシャキとした食感がアクセントになり、単調になりがちなポテトサラダに深みが出ます。

揚げ物(フライドポテト、ポテトチップスなど)

揚げ物では、カリッとした食感やホクホクとした食感を最大限に引き出す切り方が求められます。

・いちょう切り・スティック状

フライドポテトの定番は、いちょう切りや、それをさらに細長くしたスティック状の切り方です。厚さや太さによって、クリスピーな食感とホクホクとした食感のバランスを調整できます。

・輪切り・スライス

ポテトチップスを作る場合は、輪切りや、それをさらに薄くしたスライスが最適です。薄く切るほど、パリパリとした食感になります。

スープ・味噌汁

スープや味噌汁では、具材としての役割が大きいため、火の通りが良く、旨味を吸い込みやすい切り方が好まれます。

・角切り

角切りは、スープや味噌汁の具材として定番です。火の通りが均一で、ホクホクとした食感と甘みを楽しめます。小さすぎると煮崩れるので注意が必要です。

・いちょう切り

味噌汁など、比較的短時間で火を通したい場合は、いちょう切りも適しています。ホクホクとした食感と、じゃがいもの甘みがスープに溶け出します。

下準備のポイント:アク抜きと水切り

じゃがいもを切った後の下準備も、料理の仕上がりに大きく影響します。

・アク抜き

アク抜きは、じゃがいもに含まれるアク(シュウ酸など)を取り除くことで、えぐみをなくし、色味をきれいに保つために行われます。特に、煮込み料理やサラダに使う場合は、アク抜きをしっかり行うことで、じゃがいも本来の甘みや旨味を引き出しやすくなります。

切り終わったじゃがいもを水にさらすのが一般的です。水にさらす時間は、切り方やじゃがいもの種類によって異なりますが、5分~15分程度が目安です。水が濁らなくなるまで、何度か水を替えながらさらしましょう。

・水切り

アク抜きが終わったら、しっかりと水気を切ることが重要です。水気が残っていると、炒め物では油はねの原因になったり、揚げ物では衣がうまくつかなかったり、食感が悪くなったりします。

ザルにあげて水気を切るだけでなく、キッチンペーパーなどで丁寧に拭き取ると、より調理しやすくなります。

まとめ

じゃがいもの「切り方」は、単なる作業ではなく、料理の味や食感を左右する重要な工程です。乱切り、角切り、いちょう切り、短冊切り、千切り、輪切り、スライスといった様々なカット方法には、それぞれ適した料理があります。今回ご紹介した情報を参考に、料理の目的に合わせて最適な切り方を選び、じゃがいもの魅力を最大限に引き出した美味しい料理をぜひお楽しみください。

さらに、切り終わった後のアク抜きや水切りといった下準備も丁寧に行うことで、より一層、じゃがいもの美味しさを引き出すことができます。