さつまいもの「天ぷら」:甘さを引き出すための下準備と揚げ方

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さつまいもの天ぷら:甘さを引き出すための下準備と揚げ方

さつまいもの天ぷらは、その素朴な甘さとホクホクとした食感で、老若男女問わず愛される定番の天ぷらです。しかし、ただ揚げるだけでは、期待するほどの甘さや食感にならないことも。今回は、さつまいもの甘さを最大限に引き出し、外はカリッと、中はとろりとした絶品天ぷらを揚げるための、下準備から揚げ方、そして美味しくいただくためのヒントまで、詳しくご紹介します。

さつまいもの選び方:甘さの秘密は品種と鮮度

品種による甘さの違い

さつまいもの品種によって、甘さや食感は大きく異なります。天ぷらには、でんぷん質が多く、加熱すると水分が少なくなりホクホクとした食感になる品種が適しています。

* **紅あずま:** 比較的手に入りやすく、甘みが強く、ホクホクとした食感が特徴です。天ぷらにすると、程よい甘さとほっくり感が楽しめます。
* **鳴門金時:** 上品な甘さと、しっかりとした甘さが特徴で、加熱しても崩れにくいです。天ぷらにすると、素材本来の甘さを堪能できます。
* **シルクスイート:** 比較的新しい品種で、滑らかな口当たりと濃厚な甘さが特徴です。加熱するととろりとした食感になり、まるでスイーツのような味わいになります。
* **安納芋:** 非常に甘みが強く、蜜のようにとろけるような甘さが特徴です。加熱するとねっとりとした食感になり、デザートのような感覚で楽しめます。

鮮度の見極め方

天ぷらにするさつまいもは、できるだけ新鮮なものを選ぶことが大切です。

* **ずっしりとした重み:** 手に取ったときに、ずっしりと重みを感じるものは、水分が豊富でみずみずしい証拠です。
* **皮の張り:** 皮にハリとツヤがあり、傷が少ないものを選びましょう。
* **切り口の確認:** もしカットされたものが売られている場合は、切り口が乾燥しておらず、しっとりしているものを選びます。

甘さを引き出すための下準備:一手間で変わる美味しさ

切る前のひと手間:水にさらさない

さつまいもの天ぷらで最も重要な下準備は、切った後に水にさらさないことです。一般的に野菜の天ぷらは、アク抜きやでんぷん質の除去のために水にさらしますが、さつまいもの場合は逆効果。

* **でんぷん質の保持:** さつまいもの甘みの元となるでんぷん質は、水に溶け出しやすい性質があります。水にさらすことで、せっかくの甘みが流れ出てしまいます。
* **衣の付き方:** 水にさらしたことで表面が濡れていると、衣が剥がれやすくなることもあります。

適切な切り方:厚みと形

さつまいもの甘さを引き出すためには、切り方も重要です。

* **厚み:** 厚さは1cm程度がおすすめです。薄すぎるとすぐに火が通りすぎてしまい、ホクホク感が損なわれます。厚すぎると中心まで火が通りにくくなり、衣だけが焦げてしまう可能性があります。
* **形状:** 一般的には、輪切りが最も一般的で、火の通りも均一になります。また、半月切りや乱切りでも美味しく揚がります。衣がつきやすく、揚げやすくするために、角を少し丸めると良いでしょう。

切った後の処理:自然乾燥

切ったさつまいもは、キッチンペーパーなどで軽く水気を拭き取る程度にし、風通しの良い場所で数分〜10分程度自然乾燥させます。これにより、表面が少し乾くことで、衣が剥がれにくくなり、カリッとした食感に仕上がります。

隠し味:砂糖水に軽くつける(品種によっては)

品種によっては、さらに甘さを強調するために、切ったさつまいもをごく薄い砂糖水(水100mlに対し砂糖小さじ1/2程度)に数分つける方法もあります。ただし、これは糖分の多い品種(安納芋など)には不要な場合が多く、焦げ付きやすくなるので注意が必要です。揚げる直前にしっかりと水気を拭き取ってください。

衣の作り方:サクサク感を極める

基本の天ぷら衣

さつまいもの甘さを引き立てるには、衣はシンプルにするのが一番です。

* **材料:**
* 薄力粉: 100g
* 冷水: 150ml〜180ml(薄力粉の種類や湿度によって調整)
* 卵黄(お好みで): 1個

* **作り方:**
1. ボウルに薄力粉を入れ、冷蔵庫で冷やした冷水を一度に加えます。
2. 菜箸で切るように混ぜます。練りすぎるとグルテンが出てしまい、衣が硬くなってしまいます。粉っぽさが残る程度でOKです。
3. お好みで卵黄を1個加えると、コクと色味が増し、サクサク感がアップします。卵黄を加える場合も、混ぜすぎないことが重要です。

衣のポイント

* **冷たい材料:** 衣の材料はすべて冷たいものを使うのが、サクサク衣の秘訣です。ボウルに氷水を入れた上に重ねて混ぜるのも効果的です。
* **混ぜすぎない:** これが最も重要です。ダマがあっても気にしないくらいの気持ちで、さっくりと混ぜます。
* **揚げる直前に衣をつける:** 衣を作ったら、すぐに揚げず、揚げる直前にさつまいもに衣をつけます。

揚げ方:温度と時間で変わる食感

揚げ油の温度管理

さつまいもの天ぷらを美味しく揚げるには、油の温度が非常に重要です。

* **温度:** 160℃〜170℃が適温です。この温度帯で揚げることで、衣はカリッと揚がり、さつまいもの中心はゆっくりと火が通り、甘さが引き出されます。
* **温度の確認:** 菜箸を衣につけてみて、細かい泡がシュワシュワと静かに上がる程度が目安です。温度が高すぎると、衣だけが焦げてしまい、中まで火が通らなかったり、甘さが飛んでしまったりします。逆に低すぎると、油っぽくなってしまいます。

揚げ方の手順

1. 160℃〜170℃に予熱した揚げ油に、衣をつけたさつまいもを一度にたくさん入れすぎないように注意しながら、静かに入れます。一度にたくさん入れると油の温度が下がりすぎてしまいます。
2. 衣が固まるまで触らないようにします。衣が固まったら、菜箸で優しく返します。
3. 時々返しながら、全体がきつね色になるまで揚げます。目安は4〜5分程度ですが、さつまいもの厚みや量によって調整してください。
4. 竹串などを刺してみて、スッと通れば中まで火が通っています。
5. 揚がったさつまいもは、網などに乗せて油を切ります。

二度揚げでさらにカリッと

よりカリッとした食感を楽しみたい場合は、一度目に160℃でさっと色が付くまで揚げ、油から取り出して2〜3分休ませます。その後、油の温度を180℃に上げて、二度目に短時間(30秒〜1分程度)揚げることで、表面がカリッと香ばしく仕上がります。

美味しくいただくためのヒント

揚げたてをすぐに

さつまいもの天ぷらは、揚げたてが一番!外のカリッとした衣と、中のホクホクとした甘さのコントラストを存分に楽しめます。

食べ方のアレンジ

* **塩:** シンプルに岩塩などを振るだけで、さつまいもの素材本来の甘さが引き立ちます。
* **天つゆ:** 定番の天つゆも美味しいですが、甘さが強いさつまいもの場合は、だしを効かせたあっさりめの天つゆもおすすめです。
* **蜂蜜やメープルシロップ:** デザート感覚で、蜂蜜やメープルシロップをかけても美味しいです。
* **アイスクリーム:** 温かいさつまいもの天ぷらと冷たいアイスクリームの組み合わせは、絶妙なハーモニーを生み出します。

保存方法

揚げすぎた場合は、粗熱を取ってから密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存します。ただし、食感は落ちるため、できるだけ早く食べるのがおすすめです。温め直す際は、オーブントースターで軽く焼くと、衣が多少復活します。

まとめ

さつまいもの天ぷらを格別な美味しさにするためには、品種選びから始まり、水にさらさないという下準備、衣の作り方、そして適切な揚げ油の温度が鍵となります。一手間加えることで、さつまいもの本来の甘さを最大限に引き出し、外はカリッと、中はとろりとした至福の味わいを楽しむことができます。ぜひ、今回ご紹介した方法で、こだわりのさつまいもの天ぷらを試してみてください。