柑橘類の「 Processing 」:ジュース、マーマレードの製造プロセス

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柑橘類の加工:ジュースとマーマレード製造

1. 柑橘類ジュース製造プロセス

1.1. 原料の選定と受け入れ

  • 品質の高い柑橘類は、風味、色、香りが優れているため、ジュース製造に不可欠です。
  • 収穫時期、糖度、酸度、果汁歩合などが評価基準となります。
  • 受け入れ時には、異物混入(小石、小枝、農薬残留物など)がないか、外観(傷、病害、成熟度)に問題がないかを確認します。
  • 選果機や目視による厳格な選別が行われます。

1.2. 洗浄

  • 表面に付着した土、農薬、ワックスなどを除去するために、柑橘類は丁寧に洗浄されます。
  • 通常、流水洗浄やブラシ洗浄、場合によっては次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を使用した洗浄が行われます。
  • 洗浄後、風乾または温風乾燥によって水分を取り除きます。

1.3. 搾汁

  • 柑橘類ジュース製造の核心となる工程です。
  • 主に以下の方法が用いられます。
    • スクイージング(圧搾):果実を回転するローラーや円錐状のコーンで押しつぶし、果汁を搾り取ります。オレンジやグレープフルーツに一般的に使用されます。
    • 遠心分離機:高速回転する遠心力によって果汁と果肉・種子を分離します。レモンやライムなど、比較的小さな果実や、より滑らかなジュースを求める場合に適しています。
    • プレス機:果実を物理的に圧縮して果汁を搾り取ります。
  • 搾汁工程では、果皮の油分(リモネン)が混入しないように注意が必要です。これが過剰に混入すると、ジュースに苦味や不快な風味が生まれることがあります。
  • 搾られた果汁は、果肉や種子、皮などを除去するために、ろ過または遠心分離によって精製されます。

1.4. 搾汁後の処理

  • 清澄化:果汁中に浮遊する微細な固形物(懸濁物)を除去し、透明度を高めます。
    • 遠心分離:前述の搾汁工程でも使用されますが、清澄化の目的でも利用されます。
    • ろ過:フィルターを用いて固形物を物理的に除去します。
    • 酵素処理:ペクチナーゼなどの酵素を添加し、固形物を分解・沈降させて除去する方法もあります。
  • 濃縮:果汁の水分を蒸発させて濃縮し、輸送コストの削減や保存性を向上させます。
    • 真空蒸発濃縮:減圧下で果汁を加熱し、水分を蒸発させます。低温で処理できるため、風味や栄養成分の損失を最小限に抑えられます。
    • 膜濃縮(逆浸透膜、ナノろ過膜):特殊な膜を用いて水分を選択的に除去します。

1.5. 殺菌・充填

  • ジュースの保存性を高めるために、微生物を死滅させる殺菌処理が行われます。
    • 加熱殺菌(HTST法:High Temperature Short Time):比較的高温(72℃以上)で短時間(数秒〜数十秒)加熱します。風味や栄養成分の損失が少ない方法です。
    • UHT法(Ultra High Temperature):さらに高温(135℃以上)で数秒間加熱します。無菌充填と組み合わせることで、常温での長期保存が可能になります。
    • 低温殺菌:60℃〜65℃で30分程度加熱します。風味の変化は少ないですが、保存性はHTST法やUHT法に劣ります。
  • 殺菌後、ジュースは瓶、缶、紙パックなどの容器に充填され、密封されます。
  • 無菌充填:UHT殺菌したジュースを、滅菌した容器に無菌状態で充填する技術です。これにより、常温で長期保存可能なジュースが製造されます。

1.6. 品質管理

  • 各工程で、糖度、酸度、pH、ビタミンC含有量、風味、色、濁度などが定期的に検査されます。
  • 最終製品についても、官能検査(味、香り)、微生物検査、化学分析が行われ、基準を満たしていることが確認されます。

2. 柑橘類マーマレード製造プロセス

2.1. 原料の選定と準備

  • マーマレードには、オレンジ(特にネーブルオレンジ、ビターオレンジ)、レモン、グレープフルーツなどがよく使用されます。
  • 果皮の厚さ、苦味、香りが製品の品質に影響します。
  • 果実の表面を洗浄し、必要に応じてワックスを除去します。

2.2. 果皮と果肉の処理

  • 果実を半分に切り、果肉を搾り取ります。この果肉は、ジュース原料としても利用されることがあります。
  • 搾り取った後の果皮は、マーマレードの主要な材料となります。
  • 果皮は、細かくスライスしたり、千切りにしたりします。この切り方や厚みが、マーマレードの食感に影響します。
  • 苦味を和らげるために、果皮を数回水にさらしたり、茹でこぼしたりする工程が含まれることがあります。

2.3. 煮込み

  • スライスした果皮、果汁(または水)、砂糖を鍋に入れ、加熱して煮込みます。
  • 砂糖は、甘味を加えるだけでなく、保存料としての役割、そしてゲル化を助けるペクチンとの相互作用によって、マーマレード特有のゼリー状のテクスチャーを作り出すのに不可欠です。
  • ペクチンは、柑橘類の果皮や果肉に天然に含まれていますが、製品によっては増強のためにペクチンが添加されることもあります。
  • 煮込みの過程で、果皮が柔らかくなり、果汁が濃縮され、糖度が高まります。
  • 適度な粘度とゲル化(凝固)が確認されるまで煮込みます。一般的に、糖度は60〜65%程度が理想とされます。
  • 煮込みのポイント
    • 均一に加熱すること。
    • 焦げ付きを防ぐこと。
    • 果皮の風味が十分に引き出されるように、適切な温度と時間で煮込むこと。

2.4. 冷却と充填

  • 煮込み終わったマーマレードは、型に流し込む前に適度に冷却されます。
  • 冷却しすぎると固まりすぎてしまい、均一に充填できなくなります。
  • 清潔な瓶や容器に熱いうちに充填し、すぐに蓋をします。
  • 充填後、容器を逆さまにして蓋の殺菌を兼ねる「逆さ貼り」や、加熱殺菌を行う場合もあります。

2.5. 品質管理

  • 煮込み段階での糖度、pH、ゲル化の度合いが重要視されます。
  • 完成品は、風味、色、テクスチャー、保存性などが評価されます。
  • 微生物学的検査も、長期保存のためには欠かせません。

3. まとめ

柑橘類のジュースとマーマレードの製造は、それぞれに最適化された工程を経ることで、その素材の持つ風味や栄養価を最大限に引き出しています。ジュース製造では、原料の選定から始まり、洗浄、高度な搾汁技術、清澄化、濃縮、そして厳格な殺菌・充填プロセスを経て、風味豊かで品質の高い製品が生まれます。一方、マーマレード製造では、果皮の処理が鍵となり、砂糖とのバランス、ペクチンの働きを活用した煮込み、そして冷却・充填といった工程を経て、独特の風味とテクスチャーを持つ保存食が完成します。いずれのプロセスにおいても、原料の品質、衛生管理、そして各工程における精密な温度・時間管理が、最終製品の品質を決定づける重要な要素となります。